天気予報では今年から「酷暑」という表現が加わりましたね。昔は真夏で30度超えると騒いでましたが、今は40度を超えることもあります。数年前に浜松市が41度越えで日本最高気温を記録した時、ちょうど浜松南店に勤務してました。その前が群馬の前橋だったので「暑いったって群馬より暑くないでしょ」とタカをくくってたら熊谷や伊勢崎・舘林、四万十市などを飛び越えていきなり浜松市がランクトップに!その時は駐車場に置いていたパイロンがぐんにゃりと柔らかくなって、通勤で使ってた自転車は外に置いてるだけでパンクしてました。タイヤのエアバルブが地面に近いところにあると、アスファルトの熱でバルブの虫ゴムが溶けてエアが抜けちゃうんです。コレに気づくまで何日もかかって、「なんでエア抜けてるんやろ」って思いながら毎日仕事終わりにパンク修理してました。未経験の暑さは予想外の事も引き起こしますね~ 皆さんも熱中症に気を付けて。。。
前回はシフトアップ時のクラッチ操作でしたが、今回はシフト「ダウン」時について書こうと思います。バイクのミッションは常時噛み合い式で、動力が伝わっている時は他のギヤに変速しづらいっていうのは前回のお話しの通りです。そしてシフトアップよりもダウンの方がミスするとミッションやエンジンに与えるダメージが極端に大きくなります。
バイクにはフロントブレーキとリヤブレーキが装備されてますが、「エンジンブレーキ」ってのも皆さん利用してますよね。昔の笑い話では初心者がバイク屋さんに行って「エンジンブレーキ買いたいんですけど!強いヤツ!」なんてのがありました。ギヤを1段下げるとミッションのギヤ比が変わって回転抵抗が生まれます。同じギヤでもスロットルを戻すと回転抵抗で速度が落ちます。「加速をやめたから速度が落ちるんでしょ」って方はスロットルを戻すと同時にクラッチ切って(握って)見て下さい。惰性で車体が“スーーッ”って進んであんまり速度落ちないですよね。この差がミッションの持つエンジンブレーキです。
AT車のスクーターでは125㏄を超える排気量になるとシフト操作できるのがありますね。今は四輪もAT車だらけですが、Dモード以外に「2」や「1」っていうシフト位置があると思います。スクーターもAT四輪も長い下り坂なんかでエンジンブレーキが必要になるからです。MT四輪ではその昔(今でもかな)「ダブルクラッチ」なんてライテクがありました。四輪のミッションは全てが常時噛み合い式という訳ではないんですけど、シフト操作のときに一旦「N=ニュートラル」に入れて回転を上げ、シフトチェンジしてクラッチを繋ぐっていう方法です。エンジンからの動力を伝える側(メイン)のギヤの回転と、動力を受け取ってタイヤに伝える側(カウンター)のギヤ回転数を合わせる(同調させる)とギヤが「スッ」と入りやすくなるという特性を利用したものです。四輪は自動的にシンクロさせる機能が最近は付いてるみたいですが、バイクでいうとレーサーがコーナー手前でブレーキングしながら「ウォン!ウォン~!」って回転上げながらシフトダウンするのと理由は同じです。ココをミスるとリヤタイヤがロックしたり、跳ねる(ホッピング)など車体の挙動が荒れてコーナーへスムーズに向かえなくなります。
シフトアップの時にはメイン側とカウンター側の回転差はあまりずれません。だから一瞬動力を抜くだけでギヤが入りやすくなります。これがシフトダウンになると回転差が大きくなります。普段加速したりするときはエンジンがリヤタイヤを回している状態です。これがシフトダウンしてエンジンブレーキがかかるときは逆に「エンジンがリヤタイヤに回されている」状態になります。スロットル戻しますから「メイン」側のギヤは回転が下がります。でもリヤタイヤに回されている「カウンター」側のギヤはまだそこまで回転が下がりません。回転差が生まれるんですね。これを同調させる目的で一瞬だけスロットルでメイン側の回転を上げて、カウンター側と回転を合わせるとシフトショックが少なくスムーズにシフトダウンが出来るわけです。前回ご紹介した「クイックシフター」も高性能品になるとシフトダウンにも対応してくれます。BMWのS1000RRなんかに装備されているものはペダル踏み込むだけで勝手に「ウォン!ウォン~!」って回転合わせることまで行います。いきなり2速ダウンさせたとしても(やっちゃダメですが)ちゃんと回転がついてきます。すごいです。レースやスポーツ走行ではギリギリまで加速して短時間・短距離で速度を落とさないといけないので上記のような操作します。我々が一般道を普通に走ってるときまでは必要ありませんが、こういう理屈だってのは知っといて損しません。
一般道ではタイムを競う必要ないですからまず前後ブレーキで速度を落としていきます。ある程度速度が落ちたらシフトダウン。その時は短時間である必要はないので、リヤタイヤの回転(カウンター側)がしっかり落ちればエンジン(メイン側)との回転差も少なくなっていきます。前後ブレーキとスロットルを戻したエンジンブレーキを利用してしっかり速度を落とします。エンジンの回転数が下がったところでクラッチ握ってシフトダウンします。クラッチ握ったときもブレーキかけてますからリヤタイヤの回転は落ちていきますね。少し時間を掛ければカウンター側もメイン側の回転数にシンクロし始めますからスムーズにシフトダウン出来ます。クラッチをつなぐ(レバーを離す)ときはシフトアップの時みたいな「一瞬」の操作ではなく、ちょっと丁寧につなぎます。発進の時ほどシビアではないですが、スパッと離すと急にエンジンブレーキが強まってミッションに負担が掛かります。“スーッ”と離すイメージです。タコメーターの針が一気にポンッと跳ね上がるような離し方ではなく、“ジワッ”と上がるような感じです。リヤタイヤの回転を徐々にエンジンに伝えるような操作が正解です。
ココを乱雑に操作するとクラッチプレートが収まっているハウジングや、ミッションギヤの噛み合い部分に負担がかかります。クラッチハウジングに段付きの傷がつくとクラッチをつなぐときギクシャクしたり切れが悪くなったりします。ミッションギヤの噛み合い部に過度の摩耗や欠けが発生しちゃうとギヤが入らなくなる「ギヤ抜け」になったりします。クラッチの修理はエンジン搭載状態で作業できますが、ギヤ抜けしたらエンジン降ろしてクランクケース割らないといけなくなります。かなり高額な修理になっちゃいます。
昔からある「バックトルクリミッター」とか最近の「スリッパークラッチ」という機構は過度のエンジンブレーキがかかった時、自動的にクラッチを滑らせることで車体の挙動を抑えるというのが目的ですが、大事なミッションを守るという役割も持っています。これらの機能を持たない旧車などをチューンナップした場合、ボアアップしてハイカムとレーシングキャブ装着でパワーアップ!強化クラッチで余すところなくパワーをリヤタイヤへ!なんていうバイクに乗る時はシフト操作に注意しないといけないわけですね。バイクのポテンシャルアップと同時に乗り手にも理解とレベルアップが求められます。最新のノーマルで190馬力のハヤブサが初心者におススメ出来るのに、フルチューン140馬力のZ1は初心者に扱えません。これはメーカーの技術と進歩をほめるべきですが、自分を乗せてくれるバイクがどんな理屈で動いているのかを知る事で、負担を減らして長持ちさせてあげる優しい扱い方が出来る様になるんだと思います。腕のイイ料理人さんは調理技術だけじゃなく食材にも詳しいじゃないですか。変なたとえですけど。。。
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