【YZF-R1の特徴】
YZF-R1は1998年に発売した、「ツイスティロード最速」のコンセプトを引っ提げて登場したリッタークラススーパースポーツバイクです。
発売当初はサーキットではなく、峠道や公道での最速バイクを目指しており、直線のみならず、旋回性もトップクラスのバイクとなっていました。2015年にはコンセプトを方向転換し、「サーキット最速」としてMotoGPマシンのYZR-M1のノウハウを使う等、市販車レースでもトップを狙えるマシンとなりました。
■9代目まで受け継がれる伝統
1998年の発売以降、数々のモデルチェンジを行い、2019年式で9代目のYZF-R1となりました。
途中開発コンセプトの方向転換や日本国内未発売で逆車のみの流通の年がありましたが、2022年現在も生産・販売が続いており、YZF-R1のスタイリングは変わらず、伝統的なデザインで愛され続けています。
■スーパースポーツ戦国時代
開発当時は、ホンダのCBR900RRに対抗したマシンでした。
発売後は、高性能なYZF-R1の影響でホンダCBR900RRも大幅な改良を行う等、革命を起こしました。その後も各メーカーがツアラーモデルを改良してSSとして対抗したり、ミドルクラスSSをボアアップしてリッタークラスSSを発売するなど、続々とSSを開発・販売する時代となりました。
この後、国産4メーカー+海外メーカーでのSS戦国時代に突入していくこととなります。
■YZF-R1の歴史
●初代YZF-R1
1998年に発売した初代YZF-R1は、前年1997年のミラノショーで発表されました。
最高出力150psを達成するなど、「ツイスティロード最速」を体現するモデルとなりました。また、ヤマハの特徴のシャープなハンドリングは「カミソリステア」と呼ばれました。
●2代目YZF-R1
2000年に、250箇所にもなるパーツの変更や改良がおこなわれ、ほぼフルモデルチェンジなっていました。
コンセプトは変わらず公道最速ですが、完成度を大きく高めたモデルとなりました。
●3代目YZF-R1
2002年のモデルチェンジを機に、燃料供給装置をキャブレターからフューエルインジェクションに変更。テールランプにLEDの採用や、ポジションランプ一体型のヘッドライトの採用等、デザイン面でもこだわり、グッドデザイン賞を受賞するなどしました。
●4代目YZF-R1
最高出力172psを達成するなど、レースベース車としてのモデルチェンジを行いました。
これは、SBKのレギュレーションが1000ccに改定されたことにより、市販車レースでもリッタークラスの需要が出てきたことによるものでした。
このモデルの一番の特徴は、センターアップマフラー。バンク角の確保や左右の重量バランス、「カッコよさ」を求めて採用されていました。
●5代目YZF-R1
2006年の5代目YZF-R1は、吸排気系とマッピングを見直し、+3psアップしました。これにより、175psを達成し、車両重量は173kgだったため、パワーウエイトレシオが1を切ることになりました。
また、5代目と言えばヤマハ創立50周年記念のイエローカラーの発売でした。
●6代目YZF-R1
2007年からの6代目はドイツのインターモトで発表されました。
電子スロットルの採用や量産車として初採用のYCC-1(可変式エアファンネル)を搭載した新設計のエンジンの搭載等、大きく性能を向上させました。
最高出力は実に180psのモンスターマシンとなっていました。
●7代目YZF-R1
2009年からの7代目は通称「デメキン」。ヘッドライトの特徴的な形状が一番身を引く部分だった為、現代でも愛されているモデルです。
車体デザインとフレーム構造を変更し、出力を182psまで向上させました。
●8代目YZF-R1
2015年からの8代目は、開発コンセプトを「サーキット最速」へ大幅な方向転換をしました。ホイール、エンジンカバーにおいては、軽量なマグネシウム合金の採用。マフラーはチタン合金で大幅な軽量化を実現しました。
デザインもYZR-M1のようなスタイリングにするなどしました。
また、前後オーリンズ製サスペンションやカーボンカウルなどを採用した最上級モデルのYZF-R1Mも発売しました。
●9代目YZF-R1
現行の9代目は、排ガス規制に対応し、数々のパーツの最適化を行いました。
最高出力は200psと各メーカー現行SSと比べると最低値。MotoGPでもホームストレートでM1がドゥカティなどに抜かれるシーンは少なくはありませんが、コーナリングでは最大級の性能を発揮します。
レースは直線だけではない。コーナリングでいかに優位に立つか。とも受け取れる信念をYZF-R1も引き継いでいます。
【YZF-R1の装備】
ミラー一体型のフロントウインカーを含める全灯火類をLEDとしました。メーターはフルカラーの4.2インチTFTメーターを採用しました。
電子スロットルの採用もあり、走行モードの選択も可能となっています。
2018年のマイナーチェンジの際にクイックシフトシステムがアップデートされ、アップのみならず、ダウン時も使用できるようになりました。
【YZF-R1のパワーユニット】
YZF-R1はパワー不足の指摘などを振り切って、直4クロスプレーンエンジン(不等間隔燃焼)を採用し続けました。
クロスプレーンエンジン特徴等の説明は省きますが、スロットル入力で発生するトルクが正確で、コーナリング性能を高めるための採用でした。
【YZF-R1のシャシー】
しなやかで高い剛性を誇るアルミ製デルタボックスフレームを採用しました。ハードブレーキングのパワーを受け止め、俊敏かつ安定感があり、再現性の高いハンドリングを生み出します。
上級グレードのR1Mでは、オーリンズ製の電子制御サスペンションを採用しており、高負荷時でも安定した減衰力を発揮します。